コロナ禍の影響で社員の働き方を見直す会社が増えてきています。これまで、毎日定時に出勤することが当たり前だったのが、人の流れを減らしたり、通勤の「密」を避けようと考えたとき、多様な働き方が始まっています。
そうした中、中小企業が取り組みやすいものに、「時差出勤」や「フレックス勤務」といった働き方があると言われますが、時差出勤とフレックス勤務のそれぞれの内容や違いが正しく理解されていないケースも少なくありません。時差出勤もフレックス勤務も、日々の出退勤時刻を、業務や個人の都合により変えることが出来ますが、2つの働き方には、基本的に大きく異なる点がありますので注意が必要です。
時差出勤は始業・終業時刻を上げ下げするだけ
時差出勤は、会社で決まっている出退勤時刻(始業・終業時刻)を、社内の取り決めにより繰り上げたり、繰り下げたりするものです。この場合、出退勤時刻を上げ下げするだけですので、労働基準法で定められている「1週40時間」「1日8時間」は、これまでどおり守らなければなりません。就業規則がある会社では、「労働時間」の条文で「業務上必要な場合、始業・終業時刻を繰り上げ、繰り下げることがある」などと記載している場合が多いです。
一方、いわゆるフレックス勤務は、正式には「フレックスタイム制」と言い、「1週40時間」「1日8時間」といった原則的な労働時間制度とは異なる制度を採用することを意味します。フレックスタイム制を採用することで「1週40時間」「1日8時間」の枠がはずれ、1カ月などの「清算期間」の中で決められた時間を働いたかどうかで、時間外割増賃金が発生したり、不足した時間分を賃金控除したりします。
フレックスタイム制を採用してワーク・ライフバランス
最近、10人未満の会社の社長から「フレックスタイム制に切り替えたい」と相談を受け、お手伝いしました。
その会社は、これまで始業・終業が「9時・18時」、休憩が「12時から1時間」とごく一般的な労働時間制でした。スタッフには子育て中の女性が3割程度いましたが、これまで、これといって支障もなく働いていました。そこへ突然のコロナ禍。少人数とはいえ、毎日全員が決まった時間に一つの職場で働くことが気になるようになったそうです。
在宅リモートワークや時差出勤などを試す中で、「フレックスタイム制に切り替えられそうだ」と分かり、スタッフ全員で話し合い、10時~15時(休憩1時間)をコアタイム(必ず働く時間帯)とするフレックスタイム制をスタートさせました。その効果はほどなく表れ、感染防止だけでなく、プライベートな都合にもこれまで以上に対応できるようになったとスタッフから喜ばれています。
今、会社も「新しい仕事様式」を取り入れるとき?
フレックスタイム制など柔軟な働き方を採用すると、原則的な労働時間制と比べて労働時間の管理などが難しくなることがあります。小規模の会社では、勤怠管理が煩雑になることへの抵抗感もあるかも知れませんが、そうしたときは思い切って発想を変えてみましょう。最近では、低コストで使い勝手のよい勤怠管理ソフトなども多数出ています。「新しい生活様式」「ニューノーマル」が言われている今、会社も「新しい仕事様式」を考えてみてはいかがでしょう。